2010.05.29
トンデモ話は奥で繋がる(30) 22.5.29
トンデモ話は奥で繋がる 「第三十夜」
-弟子のクッテネルがお送りします。
≪無から有の世界に生きる一族≫
★ それは金融業から始まった
ロスチャイルド家の系譜を辿る前に、そもそも「貨幣」とは何なのか
を考えてみたいと思います。
物々交換の時代にあっては、お互いの所有する物品について「等価
値」 となるような交換がなされており、仮にどちらかが「利ざや」を取っ
ていたにせよ、長期的には「うまみ」が相殺されて均衡するはずです。
しかし、これではお互いの要求を満たす相手が現れた時にしか交
換ができません。そこで、物品の価値を表す共通の媒体として「貨幣」
が考案され、品物はいったん「貨幣」と交換され、それと等価のものを購
入する権利を担保されます。
「貨幣」として、長期間品質の変らないものが望まれ、次第に金・銀が
一般的な貨幣となります。しかし、乱発されればその価値の信用度が
なくなってしまうため、鋳造の権利が国王等に特定化されてゆきます。
また、国費を調達する手段として、定期的に金貨等の一部を税金とし
て削り取り、新たに刻印して改鋳することも行われます。これを請け負
ったのが「金細工師」です。
しかし、大権力者ともなると、集まってくる金貨等の保管場所に困っ
てきます。そこで、現物は「金細工師」に保管させ、自らはその預り証
を保有するスタイルが生まれ、「金細工師」はサイドビジネスとして、保管
料の収入を得るようになります。
やがて、物品の購入の際、保管してある金・銀を引き出すことなく、
預り証を譲渡することで、金・銀の所有権のみを移転させる方法に変
ってゆきます。これが「紙幣」の発生で、これについては、いつでも金貨
と引き換えのできる、実際の価値の裏づけのあるものです。
その一方で、「金細工師」達は、一向に引き出されることのない金貨
に目をつけます。眠ったままの金貨を裏づけとして、金に困った人達
に「紙幣」を貸付け、「利子」を取るというビジネスが生まれます。
これこそ、現在の銀行の収益方法ですが、裏づけとしている金貨は、
預金者の資産として既に「預り証」が発行されています。それに対して
さらに「紙幣」の貸付を設定することは、同じ金貨に対して二重の紙幣
を発行していることを意味しています。
つまり後者は、あくまでも借手が、将来、同額をもって返済すべきこ
とを示す債務としての「紙幣」であって、貸し付けた時点では実際の金
貨の裏づけは何もないのです。
★ 銀行、それは巧妙に仕組まれた詐欺
つまるところ、銀行の融資する紙幣とは、貸し付ければ貸し付けるだ
け、返済者の債務が積みあがっていく負の財産です。そして、借手が
苦労して返済した金貨等の大半が先の債務の相殺に消える一方で、
銀行は労せずして利子分の金貨を手に入れるシステムなのです。
まさに、何の労力もかけずに「無」から財産を生み出すこのシステム
の唯一の弱点は、金融不安による「取り付け騒ぎ」です。
預け主が一斉に金貨等を引き出そうとしても、金庫には「二重に発行
された」分、そして、実際にはそれが連鎖的に繰り返されて何重にも膨
れ上がった分の紙幣はありません。
従って、銀行家同士は互いにカルテルを結び、「取り付け騒ぎ」が起
こった場合は、金貨を融通し合います。そうしないと、全体的な紙幣の
金額が、実際の金貨等の何倍にも膨れ上がっている以上、騒ぎが連鎖的
に拡大してゆくからです。
そして、これらの詐欺的な利殖方法を、外部に漏らすことなく、できるだけ
永続的なものとするために、銀行家同士の姻戚関係が進み、金貨は次
第に少数の一族の金庫の中に集められてゆくのです。
★ そしてダイヤモンド、ウランへ
さて、彼等がそれを「本業」としてゆく上で、むやみに金・銀が産出された
のでは、借手がなくなってしまいます。そこで彼等は、その金貨をつぎ込
んで、その大元である「鉱山」を買い占めてゆきます。
そもそも、金・銀についても、その細工のし易さや、錆びない利点から、食
器や調度品に使用されており、それなりの価値は持っていますが、その価
値の大半は、その「輝き」に対するもので、それに興味のない人達にとっ
てはその部分の価値は無きに等しいといえます。
例えば、再び氷河期が訪れて、寒さと飢えに困窮する中、物々交換だけ
が行われる世界であれば、「木の実」と「毛皮」は交換する価値があるで
しょうが、金銀など何の足しにもならないでしょう。
さらに、鉱山から得られるものの中に、宝石があります。こちらはまさに
「輝き」のみの価値です。掘り出すのに労力を要するとはいえ、 偶然に手
に入れれば、まさに「無」が莫大な「資産」に変わるのが今の世の中です。
さて、今でこそ宝石の王様となった「ダイヤモンド」も、原石のままでの輝
きは乏しかったため、中世ではその価値は低く、原石での価値はエメラル
ドの4分の1、ルビーの8分の1で、主として金銀細工の副飾品として取引
されていました。
しかし、17世紀に開発されたブリリアン・カットの技術がその価値を一変
させます。単独でも充分な価値を得たダイヤモンドは、新しい産業であるため、
まだギルドも発生しておらず、前二十九夜でお話したアムステルダムへ退避
したユダヤ人の主たる職業となってゆきます。
さらにもう一つが、二十四夜から二十八夜にかけてお話した、ウラン鉱石です。
これも、安全に取り扱うコストを考えれば、発電用としての価値は非常に低く、核
兵器という「人道に外れた」使用価値しか持たない無用のものなのです。
ただし、忘れてはならないのは、彼等がこうした稼業に手を染めてゆくことにな
った背景には、主としてキリスト教皇が取ってきた極端な身分差別により、彼等
が"賤業"とした金融業以外の生業を奪い、かつ、それを蔑みながらも"必要悪"
として利用してきた一面があることも事実なのです。
ロスチャイルド財閥の増長の歴史は、まさにこの「無用の長物」を、次々と経
済の主役にすり替えていった歴史そのものです。次回第三十一夜からは、も
う一度「赤い楯」に戻って、その足取りを辿ってゆこうと思います。
目次のペーシへはこちらから
-弟子のクッテネルがお送りします。
≪無から有の世界に生きる一族≫
★ それは金融業から始まった
ロスチャイルド家の系譜を辿る前に、そもそも「貨幣」とは何なのか
を考えてみたいと思います。
物々交換の時代にあっては、お互いの所有する物品について「等価
値」 となるような交換がなされており、仮にどちらかが「利ざや」を取っ
ていたにせよ、長期的には「うまみ」が相殺されて均衡するはずです。
しかし、これではお互いの要求を満たす相手が現れた時にしか交
換ができません。そこで、物品の価値を表す共通の媒体として「貨幣」
が考案され、品物はいったん「貨幣」と交換され、それと等価のものを購
入する権利を担保されます。
「貨幣」として、長期間品質の変らないものが望まれ、次第に金・銀が
一般的な貨幣となります。しかし、乱発されればその価値の信用度が
なくなってしまうため、鋳造の権利が国王等に特定化されてゆきます。
また、国費を調達する手段として、定期的に金貨等の一部を税金とし
て削り取り、新たに刻印して改鋳することも行われます。これを請け負
ったのが「金細工師」です。
しかし、大権力者ともなると、集まってくる金貨等の保管場所に困っ
てきます。そこで、現物は「金細工師」に保管させ、自らはその預り証
を保有するスタイルが生まれ、「金細工師」はサイドビジネスとして、保管
料の収入を得るようになります。
やがて、物品の購入の際、保管してある金・銀を引き出すことなく、
預り証を譲渡することで、金・銀の所有権のみを移転させる方法に変
ってゆきます。これが「紙幣」の発生で、これについては、いつでも金貨
と引き換えのできる、実際の価値の裏づけのあるものです。
その一方で、「金細工師」達は、一向に引き出されることのない金貨
に目をつけます。眠ったままの金貨を裏づけとして、金に困った人達
に「紙幣」を貸付け、「利子」を取るというビジネスが生まれます。
これこそ、現在の銀行の収益方法ですが、裏づけとしている金貨は、
預金者の資産として既に「預り証」が発行されています。それに対して
さらに「紙幣」の貸付を設定することは、同じ金貨に対して二重の紙幣
を発行していることを意味しています。
つまり後者は、あくまでも借手が、将来、同額をもって返済すべきこ
とを示す債務としての「紙幣」であって、貸し付けた時点では実際の金
貨の裏づけは何もないのです。
★ 銀行、それは巧妙に仕組まれた詐欺
つまるところ、銀行の融資する紙幣とは、貸し付ければ貸し付けるだ
け、返済者の債務が積みあがっていく負の財産です。そして、借手が
苦労して返済した金貨等の大半が先の債務の相殺に消える一方で、
銀行は労せずして利子分の金貨を手に入れるシステムなのです。
まさに、何の労力もかけずに「無」から財産を生み出すこのシステム
の唯一の弱点は、金融不安による「取り付け騒ぎ」です。
預け主が一斉に金貨等を引き出そうとしても、金庫には「二重に発行
された」分、そして、実際にはそれが連鎖的に繰り返されて何重にも膨
れ上がった分の紙幣はありません。
従って、銀行家同士は互いにカルテルを結び、「取り付け騒ぎ」が起
こった場合は、金貨を融通し合います。そうしないと、全体的な紙幣の
金額が、実際の金貨等の何倍にも膨れ上がっている以上、騒ぎが連鎖的
に拡大してゆくからです。
そして、これらの詐欺的な利殖方法を、外部に漏らすことなく、できるだけ
永続的なものとするために、銀行家同士の姻戚関係が進み、金貨は次
第に少数の一族の金庫の中に集められてゆくのです。
★ そしてダイヤモンド、ウランへ
さて、彼等がそれを「本業」としてゆく上で、むやみに金・銀が産出された
のでは、借手がなくなってしまいます。そこで彼等は、その金貨をつぎ込
んで、その大元である「鉱山」を買い占めてゆきます。
そもそも、金・銀についても、その細工のし易さや、錆びない利点から、食
器や調度品に使用されており、それなりの価値は持っていますが、その価
値の大半は、その「輝き」に対するもので、それに興味のない人達にとっ
てはその部分の価値は無きに等しいといえます。
例えば、再び氷河期が訪れて、寒さと飢えに困窮する中、物々交換だけ
が行われる世界であれば、「木の実」と「毛皮」は交換する価値があるで
しょうが、金銀など何の足しにもならないでしょう。
さらに、鉱山から得られるものの中に、宝石があります。こちらはまさに
「輝き」のみの価値です。掘り出すのに労力を要するとはいえ、 偶然に手
に入れれば、まさに「無」が莫大な「資産」に変わるのが今の世の中です。
さて、今でこそ宝石の王様となった「ダイヤモンド」も、原石のままでの輝
きは乏しかったため、中世ではその価値は低く、原石での価値はエメラル
ドの4分の1、ルビーの8分の1で、主として金銀細工の副飾品として取引
されていました。
しかし、17世紀に開発されたブリリアン・カットの技術がその価値を一変
させます。単独でも充分な価値を得たダイヤモンドは、新しい産業であるため、
まだギルドも発生しておらず、前二十九夜でお話したアムステルダムへ退避
したユダヤ人の主たる職業となってゆきます。
さらにもう一つが、二十四夜から二十八夜にかけてお話した、ウラン鉱石です。
これも、安全に取り扱うコストを考えれば、発電用としての価値は非常に低く、核
兵器という「人道に外れた」使用価値しか持たない無用のものなのです。
ただし、忘れてはならないのは、彼等がこうした稼業に手を染めてゆくことにな
った背景には、主としてキリスト教皇が取ってきた極端な身分差別により、彼等
が"賤業"とした金融業以外の生業を奪い、かつ、それを蔑みながらも"必要悪"
として利用してきた一面があることも事実なのです。
ロスチャイルド財閥の増長の歴史は、まさにこの「無用の長物」を、次々と経
済の主役にすり替えていった歴史そのものです。次回第三十一夜からは、も
う一度「赤い楯」に戻って、その足取りを辿ってゆこうと思います。
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