2010.05.05
トンデモ話は奥で繋がる(26) 22.5.5
トンデモ話は奥で繋がる 「第二十六夜」
-弟子のクッテネルがお送りします。
≪原子力発電のウソに気をつけろ③≫
★ 「原子力発電は何故推進されるのか?」
原子力発電については、日本政府自体がその普及を推進しているこ
とから、その抱えている問題点については、公式にはほとんど言及さ
れないばかりか、「推進」の根拠についても、巧みな論理のすり替え
がなされた上で、学校教育の場でも喧伝されています。
そうした点を危惧する先生方を中心としたサイトのひとつに「よく
わかる原子力」というページがあり、放射能についての基礎知識から、
原子力発電をとりまく状況まで、その問題点についてわかり
やすく説明されています。
以下、その中の「原子力発電は何故推進されるのか?」について要
点をまとめてみたいと思います。
★ 「電力会社はコストで稼ぐ?」
電力会社の公式な「発電コスト」では、「原子力」の方が「水力」
や「火力」より低コストということになっていますが、「原子力」の
コストの算出方法についても、
① 原子炉の耐用年数を、当初の原価償却期間であった16年から
40年に引き上げて計算していること。
② 稼働率についても、水力が「45%」に対し、火力・原子力は
「70%」で計算していること。
③ 原子炉の「廃炉」や「放射性廃棄物」の管理にかかるコストを
考慮していないこと。
と、その優位性には疑問が残ります。しかしながら、昨今では「環
境保護」に関する関心の高まりから、電力会社は「水力」や「火力」
の発電所を増設しにくい状況にあります。
そこで目をつけられているのが、表向きは「環境に優しいクリーン
・エネルギー」を標榜している「原子力」です。原子力発電所を1基
作るのに必要な費用は3,000~4,000億円となり、原子炉の
建設会社にとっては大きな利益を生むプロジェクトです。
さて、こうして電力会社全体で年間2兆円以上の費用が原子力発電
のために支出されていますが、「公益企業」である電力会社は、一般
企業とは違ったコスト意識を持っています。
まず、電気発電の原価については、
原価=発電所・変電所や送電線の建設費+燃料費+運転費用など
となり、建設費はかかった費用がそのまま計上されます。
問題は電力会社の法律で保障された「報酬」と「電気料金」です。
報酬=原価×4.4/100、電気料金=原価+報酬
つまり、電力会社はコストが高ければ高いほど儲けは大きくなり、
そのまま電気料金に転嫁できるというシステムなのです。
これでは、コスト削減の意識は生まれるはずもなく、むしろ、ムダ
になろうが巨額な発電所を建設した方が、電力会社も建設会社も実収
が大きいのです。
原子力資料情報室の計算では、100万kW級の原子炉1基を安全
に「廃炉」するために必要なコストは6,320億円と、建設費より
大きいとされています。
資源エネルギー庁の資料によれば、現在運転中の原子炉53基のう
ち、2010年までに稼動年数が30年を超えるものが20基と全体
の約4割を占め、合計出力数は約1,480万kWとなっています。
上記の「廃炉」コストで計算すれば9兆3,536億円。20年の
日本の歳出額(約107.3兆円)の約9%に相当する金額です。
仮に、電力会社がこの必要額を認めた場合でも、それは原価に加算
され、彼等の報酬と電気料金に上乗せされてしまうのです。
★ 「自治体は迷惑料を歓迎する?」
電気料金には「電源開発促進税」が課税されています。これを財源
とする「交付金」が「発電所」を受け入れた「自治体」へ交付されます。
前述のサイトでは、高速増殖炉「もんじゅ」によって周辺自治体へ
交付された金額を掲載しています。
立地市 敦賀市 56億9430万円、
隣接自治体 三方郡美浜町 22億5000万円、
南条郡河野村 7億9300万円、
今庄町 7億5200万円、
隣々接自治体 越前町 7億1300万円、
武生市 1億4900万円、
南条町 1億4900万円、
今立郡池田町 9900万円
立地県 福井県 12億6550万円
他、福井県合計 約126億円
(朝日新聞福井支局「原発がきた、そして今」朝日新聞社より)
例えば敦賀市の場合、平成20年度の歳出が278億円ですので、
その約5分の1が交付される計算です。しかし、原子力発電所は、
せいぜい労働者が雇われる(それも相当の危険付きです。)程度で、
それ自体が地元の振興に繋がるわけではありません。交付金は言わ
ば「迷惑料」なのですが、一度受け入れてしまうと、それを抜きに
した財政運営が出来なくなるのが現状です。
★ 「原発」の必要意識が植え付けられている
間接的には「原発」を「必要悪」だとして容認している、或いは
無関心でいる地域民がいることも大きな要因です。
現に「原子力発電所」の是非を問う形での「首長選挙」が幾度と
なく行われていますが、その度に多くの「賛成票」が投じられ、結
果として推進派の首長が信任を得るケースが後を絶ちません。
無論、直接の利権に関わる票もあるでしょうが、「色々な問題点
はあるが、やはり、どこかに原発がなくては日本の必要電力量が賄
えない」と思っている人々の票が、それを後押ししているのです。

しかし、本当にそうなの
でしょうか。前述の『よく
わかる原子力』では、以下
のような図とともに、その
疑問を説明しています。
まず、『原発なくても大丈
夫 節電は原発をなくす』
に掲載されている「グラフ1」
を見てみましょう。
この図は2001年の年間
最大電気消費量を記録した
7月24日の、時間ごとの消
費量をグラフにしたものです。
当日は全国各地が真夏日
を記録した「快晴」の日で、
昼休み(B点)を過ぎて工場が
午後の生産を開始し、家庭で
はクーラーを利かせながら
「高校野球」を観戦していま
した。
その時のピーク電力使用量がC点の18,240kW。この時には「揚水
式のダム発電」までフル稼働して、電気需要量に対応しています。
しかし、そのような状況となるのは年間のこの一時期、年間わずか20
時間弱のことです。
また、グラフを見てお気付きのように、どの時間帯においても、「原子力
発電」の発電量は一律となっています。実は「原子力発電」は発電量の
調整が極めて難しいため、需要量に合った調整は、その他の「発電」に
頼らざるを得ないのです。

そのため、「稼働率」のみをみると、上図のとおり、常に70%内外を維持
していおり、電力会社は「安定的な供給」を喧伝し、「最大ピーク時」のため
にも「原子力発電量」を増やす必要があると言っていますが、そのためな
らば、むしろ調整の効く他の発電方法を増やすべきなのです。
事実、その逆のケースも起こっています。「グラフ4」は、2000年4月の
ある一日の電気需要量を示していますが、ピーク時でも12,130kW。
一方、D点では「流込式水力・地熱」と「原子力」の発電量が既に需要
量を上回ってしまっています。

「原子力」の発電の調整ができず、「乾電池」のように「電気」を貯めてお
くことも出来ないため、やむを得ず「揚水式」のダムのポンプの稼動電
力として使い、ピーク時にその水の発電力を混合させて供給しています。
となれば、調整の効かない「原子力発電」はDの供給量を基準とし
て、発電量を減らした方が効率的ということになります。
★ 原子力技術=核兵器製造力
日本国民で「日本も将来核兵器を持つべき」と考えている人は、
恐らく極めて少数派でしょう。しかし、日本の政財界の中には、
「その時のための技術力と資源を持っていなくてはならない」と考
えている人達がいます。
現に2002年には、当時の内閣官房副長官であった安部晋三が
「核兵器や大陸間弾道弾も憲法上は問題ではない、小型であれ
ばよい。」と発言しているのです。
しかし、そのためには「核兵器能力」の高い「プルトニウム239」が
必要です。しかし、「非核3原則」を旗印としている日本は、直接、核兵
器のためのプルトニウム239を製造するわけにはいきません。
すると、どうしても必要なのが、「もんじゅ」のような高速増殖炉です。
しかし、そのためにはその前段階となる「使用済核燃料」が必要
になります。つまりは、表向きは「平和利用」の肩書きを持った「原子力
発電」が相当数稼動していなければならないわけです。
★ 「原子力の平和的利用」の政治的圧力

理学博士の「高木仁三郎」氏
は、日本の原子力産業の創生
期に、その主要企業であった
三井・東芝系の「日本原子力
事業(NAIG)」に「核化
学」の研究員として従事した
第一人者ですが、その後その
あり方に疑問を感じ、原子力
資料情報室を設立して、その
真の姿を知らしめるとともに、
危険性について数々の警鐘本
を執筆しています。
その高木氏は、その著書『原
子力神話からの解放』で、原
子力産業の成立の経過につい
て述べています。ちょっと長くな
りますが、ポイントとなるところ
を、原文のまま抜粋してみます。
『原子力の商業利用、とりわけ原子力発電は、そもそも核兵器の
ために開発された技術の「平和的利用」という政治的目的をもっ
て、あるときから世界的に導入されました。
原子力開発は当初、主要に軍事的目的で行われたことは言うま
でもなく、アメリカの原爆開発計画のなかで、さらにそれを追う
ようにして続いたソ連(当時)の原爆開発のなかで、最初から商
業利用が考えられていたとは思えません。 (同書p48)
…原子力はそうではなくて、むしろいきなり政治的に、開発す
べきであるという状況が与えられてしまいます。それに対する技
術の蓄えとか産業的な備えなどは全くなかったけれども、政治的
に上から「平和利用」というものを、これはかなり強引におしつ
られてきました。
このような経過の背景には、国家権力と、産業資本というより
は金融資本の思惑がありましたが、国際的にもそういう流れが強
かったようです。 (同書p63)
それでは日本の事情はどうだったかというと、これとよく似た
状況でした。日本では産業界もそうですが、とくに学術会議を中
心とする学者たちの間で、軍事利用との明確な境界線が引けそう
もない、或いは軍事利用の方向へ流れていく可能性が強い原子力
開発については、非常に抵抗が大きかったわけです。
…(中略)…
1954年の3月2日に、突如として、国会に原子力関連の予
算が出されて、それが国会を通過したのです。
その中心的な役割を担ったのは、当時、アメリカで勉強してき
て原子力に非常に乗り気であった、中曽根康弘という青年政治家
だったのですが、それはまさに、学術会議の学者たちにとって寝
耳に水の出来事でした。
…(中略)…
中曽根氏は、後にそのころのことを次のように述べている。
「学術会議においては、(原子力の)研究開発にむしろ否定的な
形勢がつよかったようであった。私はその状況をよく調べて、
もはやこの段階に至ったならば、政治の力によって突破する以
外に、日本の原子力問題を解決する方法はないと直感した。
…国家の方向を決めるのは政治家の責任である。…」
(日本原子力産業会議、『原子力開発十年史』、1965年)
(同書p66~68抜粋)』
つまりは、「その状況」が「この段階に至った」と感じた特定の
政治家の意向のもとに、国家的な使命のごとく位置づけられてしま
ったということです。
これらの事実を、何故新聞社やテレビ局は声を上げて一般に知ら
しめないのか。次回第二十七夜は、そのあたりから述べてゆきたい
と思います。
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-弟子のクッテネルがお送りします。
≪原子力発電のウソに気をつけろ③≫
★ 「原子力発電は何故推進されるのか?」
原子力発電については、日本政府自体がその普及を推進しているこ
とから、その抱えている問題点については、公式にはほとんど言及さ
れないばかりか、「推進」の根拠についても、巧みな論理のすり替え
がなされた上で、学校教育の場でも喧伝されています。
そうした点を危惧する先生方を中心としたサイトのひとつに「よく
わかる原子力」というページがあり、放射能についての基礎知識から、
原子力発電をとりまく状況まで、その問題点についてわかり
やすく説明されています。
以下、その中の「原子力発電は何故推進されるのか?」について要
点をまとめてみたいと思います。
★ 「電力会社はコストで稼ぐ?」
電力会社の公式な「発電コスト」では、「原子力」の方が「水力」
や「火力」より低コストということになっていますが、「原子力」の
コストの算出方法についても、
① 原子炉の耐用年数を、当初の原価償却期間であった16年から
40年に引き上げて計算していること。
② 稼働率についても、水力が「45%」に対し、火力・原子力は
「70%」で計算していること。
③ 原子炉の「廃炉」や「放射性廃棄物」の管理にかかるコストを
考慮していないこと。
と、その優位性には疑問が残ります。しかしながら、昨今では「環
境保護」に関する関心の高まりから、電力会社は「水力」や「火力」
の発電所を増設しにくい状況にあります。
そこで目をつけられているのが、表向きは「環境に優しいクリーン
・エネルギー」を標榜している「原子力」です。原子力発電所を1基
作るのに必要な費用は3,000~4,000億円となり、原子炉の
建設会社にとっては大きな利益を生むプロジェクトです。
さて、こうして電力会社全体で年間2兆円以上の費用が原子力発電
のために支出されていますが、「公益企業」である電力会社は、一般
企業とは違ったコスト意識を持っています。
まず、電気発電の原価については、
原価=発電所・変電所や送電線の建設費+燃料費+運転費用など
となり、建設費はかかった費用がそのまま計上されます。
問題は電力会社の法律で保障された「報酬」と「電気料金」です。
報酬=原価×4.4/100、電気料金=原価+報酬
つまり、電力会社はコストが高ければ高いほど儲けは大きくなり、
そのまま電気料金に転嫁できるというシステムなのです。
これでは、コスト削減の意識は生まれるはずもなく、むしろ、ムダ
になろうが巨額な発電所を建設した方が、電力会社も建設会社も実収
が大きいのです。
原子力資料情報室の計算では、100万kW級の原子炉1基を安全
に「廃炉」するために必要なコストは6,320億円と、建設費より
大きいとされています。
資源エネルギー庁の資料によれば、現在運転中の原子炉53基のう
ち、2010年までに稼動年数が30年を超えるものが20基と全体
の約4割を占め、合計出力数は約1,480万kWとなっています。
上記の「廃炉」コストで計算すれば9兆3,536億円。20年の
日本の歳出額(約107.3兆円)の約9%に相当する金額です。
仮に、電力会社がこの必要額を認めた場合でも、それは原価に加算
され、彼等の報酬と電気料金に上乗せされてしまうのです。
★ 「自治体は迷惑料を歓迎する?」
電気料金には「電源開発促進税」が課税されています。これを財源
とする「交付金」が「発電所」を受け入れた「自治体」へ交付されます。
前述のサイトでは、高速増殖炉「もんじゅ」によって周辺自治体へ
交付された金額を掲載しています。
立地市 敦賀市 56億9430万円、
隣接自治体 三方郡美浜町 22億5000万円、
南条郡河野村 7億9300万円、
今庄町 7億5200万円、
隣々接自治体 越前町 7億1300万円、
武生市 1億4900万円、
南条町 1億4900万円、
今立郡池田町 9900万円
立地県 福井県 12億6550万円
他、福井県合計 約126億円
(朝日新聞福井支局「原発がきた、そして今」朝日新聞社より)
例えば敦賀市の場合、平成20年度の歳出が278億円ですので、
その約5分の1が交付される計算です。しかし、原子力発電所は、
せいぜい労働者が雇われる(それも相当の危険付きです。)程度で、
それ自体が地元の振興に繋がるわけではありません。交付金は言わ
ば「迷惑料」なのですが、一度受け入れてしまうと、それを抜きに
した財政運営が出来なくなるのが現状です。
★ 「原発」の必要意識が植え付けられている
間接的には「原発」を「必要悪」だとして容認している、或いは
無関心でいる地域民がいることも大きな要因です。
現に「原子力発電所」の是非を問う形での「首長選挙」が幾度と
なく行われていますが、その度に多くの「賛成票」が投じられ、結
果として推進派の首長が信任を得るケースが後を絶ちません。
無論、直接の利権に関わる票もあるでしょうが、「色々な問題点
はあるが、やはり、どこかに原発がなくては日本の必要電力量が賄
えない」と思っている人々の票が、それを後押ししているのです。

しかし、本当にそうなの
でしょうか。前述の『よく
わかる原子力』では、以下
のような図とともに、その
疑問を説明しています。
まず、『原発なくても大丈
夫 節電は原発をなくす』
に掲載されている「グラフ1」
を見てみましょう。
この図は2001年の年間
最大電気消費量を記録した
7月24日の、時間ごとの消
費量をグラフにしたものです。
当日は全国各地が真夏日
を記録した「快晴」の日で、
昼休み(B点)を過ぎて工場が
午後の生産を開始し、家庭で
はクーラーを利かせながら
「高校野球」を観戦していま
した。
その時のピーク電力使用量がC点の18,240kW。この時には「揚水
式のダム発電」までフル稼働して、電気需要量に対応しています。
しかし、そのような状況となるのは年間のこの一時期、年間わずか20
時間弱のことです。
また、グラフを見てお気付きのように、どの時間帯においても、「原子力
発電」の発電量は一律となっています。実は「原子力発電」は発電量の
調整が極めて難しいため、需要量に合った調整は、その他の「発電」に
頼らざるを得ないのです。

そのため、「稼働率」のみをみると、上図のとおり、常に70%内外を維持
していおり、電力会社は「安定的な供給」を喧伝し、「最大ピーク時」のため
にも「原子力発電量」を増やす必要があると言っていますが、そのためな
らば、むしろ調整の効く他の発電方法を増やすべきなのです。
事実、その逆のケースも起こっています。「グラフ4」は、2000年4月の
ある一日の電気需要量を示していますが、ピーク時でも12,130kW。
一方、D点では「流込式水力・地熱」と「原子力」の発電量が既に需要
量を上回ってしまっています。

「原子力」の発電の調整ができず、「乾電池」のように「電気」を貯めてお
くことも出来ないため、やむを得ず「揚水式」のダムのポンプの稼動電
力として使い、ピーク時にその水の発電力を混合させて供給しています。
となれば、調整の効かない「原子力発電」はDの供給量を基準とし
て、発電量を減らした方が効率的ということになります。
★ 原子力技術=核兵器製造力
日本国民で「日本も将来核兵器を持つべき」と考えている人は、
恐らく極めて少数派でしょう。しかし、日本の政財界の中には、
「その時のための技術力と資源を持っていなくてはならない」と考
えている人達がいます。
現に2002年には、当時の内閣官房副長官であった安部晋三が
「核兵器や大陸間弾道弾も憲法上は問題ではない、小型であれ
ばよい。」と発言しているのです。
しかし、そのためには「核兵器能力」の高い「プルトニウム239」が
必要です。しかし、「非核3原則」を旗印としている日本は、直接、核兵
器のためのプルトニウム239を製造するわけにはいきません。
すると、どうしても必要なのが、「もんじゅ」のような高速増殖炉です。
しかし、そのためにはその前段階となる「使用済核燃料」が必要
になります。つまりは、表向きは「平和利用」の肩書きを持った「原子力
発電」が相当数稼動していなければならないわけです。
★ 「原子力の平和的利用」の政治的圧力

理学博士の「高木仁三郎」氏
は、日本の原子力産業の創生
期に、その主要企業であった
三井・東芝系の「日本原子力
事業(NAIG)」に「核化
学」の研究員として従事した
第一人者ですが、その後その
あり方に疑問を感じ、原子力
資料情報室を設立して、その
真の姿を知らしめるとともに、
危険性について数々の警鐘本
を執筆しています。
その高木氏は、その著書『原
子力神話からの解放』で、原
子力産業の成立の経過につい
て述べています。ちょっと長くな
りますが、ポイントとなるところ
を、原文のまま抜粋してみます。
『原子力の商業利用、とりわけ原子力発電は、そもそも核兵器の
ために開発された技術の「平和的利用」という政治的目的をもっ
て、あるときから世界的に導入されました。
原子力開発は当初、主要に軍事的目的で行われたことは言うま
でもなく、アメリカの原爆開発計画のなかで、さらにそれを追う
ようにして続いたソ連(当時)の原爆開発のなかで、最初から商
業利用が考えられていたとは思えません。 (同書p48)
…原子力はそうではなくて、むしろいきなり政治的に、開発す
べきであるという状況が与えられてしまいます。それに対する技
術の蓄えとか産業的な備えなどは全くなかったけれども、政治的
に上から「平和利用」というものを、これはかなり強引におしつ
られてきました。
このような経過の背景には、国家権力と、産業資本というより
は金融資本の思惑がありましたが、国際的にもそういう流れが強
かったようです。 (同書p63)
それでは日本の事情はどうだったかというと、これとよく似た
状況でした。日本では産業界もそうですが、とくに学術会議を中
心とする学者たちの間で、軍事利用との明確な境界線が引けそう
もない、或いは軍事利用の方向へ流れていく可能性が強い原子力
開発については、非常に抵抗が大きかったわけです。
…(中略)…
1954年の3月2日に、突如として、国会に原子力関連の予
算が出されて、それが国会を通過したのです。
その中心的な役割を担ったのは、当時、アメリカで勉強してき
て原子力に非常に乗り気であった、中曽根康弘という青年政治家
だったのですが、それはまさに、学術会議の学者たちにとって寝
耳に水の出来事でした。
…(中略)…
中曽根氏は、後にそのころのことを次のように述べている。
「学術会議においては、(原子力の)研究開発にむしろ否定的な
形勢がつよかったようであった。私はその状況をよく調べて、
もはやこの段階に至ったならば、政治の力によって突破する以
外に、日本の原子力問題を解決する方法はないと直感した。
…国家の方向を決めるのは政治家の責任である。…」
(日本原子力産業会議、『原子力開発十年史』、1965年)
(同書p66~68抜粋)』
つまりは、「その状況」が「この段階に至った」と感じた特定の
政治家の意向のもとに、国家的な使命のごとく位置づけられてしま
ったということです。
これらの事実を、何故新聞社やテレビ局は声を上げて一般に知ら
しめないのか。次回第二十七夜は、そのあたりから述べてゆきたい
と思います。
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